2026年4月6日月曜日

プレリュード・ノン・ムジュレ (Gemini)

 

「プレリュード・ノン・ムジュレ(拍子のない前奏曲)」は、17世紀フランスのクラヴサン音楽における最も独創的で、かつ謎めいた形式ですね。

楽譜から小節線が消え、全音符(白玉)だけで書かれたり、複雑な曲線で音のつながりが示されたりするその姿は、一見すると現代音楽の図形楽譜のようでもあります。この形式の魅力を、いくつか掘り下げてみます。

1. 旋律ではなく「響き」を奏でる

この形式のルーツは、さらに古い時代のリュート奏法にあります。リュートは音がすぐに減衰するため、和音をバラバラに弾く「スティル・ブリゼ(分散様式)」で響きを持続させていました。

クラヴサンにおいても、特定の拍子に縛られるのではなく、**「その調性(モード)がいかに美しく響くか」**を確認するために、即興的に指を動かしたのが始まりです。

2. ルイ・クープランとボーアン写本の特異性

ボーアン写本に収められているルイ・クープランのプレリュードは、そのほとんどが「全音符のみ」で記譜されています。

  • 演奏者の自由: 音の長さ、休止、どの音を保持し、どの音を響かせるかは、すべて演奏者の修辞的(レトリック)な判断に委ねられています。

  • 「響きの彫刻」: 和声の不協和音をあえて長く引き延ばしたり、解決を遅らせたりすることで、当時の調律(ミーントーンなど)特有の「うねり」を最大限に引き出すことができます。

3. ダングルベールによる進化

時代が下ると、ダングルベールルベーグは、もう少し具体的なリズムのヒントを書き込むようになります(黒い音符の混在)。

特にダングルベールは、装飾音を極めて緻密に指定しました。自由な時間軸の中に、宝石を散りばめるような細かな装飾を施していく作業は、当時のフランス宮廷の美意識そのものです。

4. 教会旋法(モード)との関連

この時代のプレリュードは、しばしば「第1旋法のプレリュード」といった具合に、長短調ではなく旋法に基づいた性格を強く持っています。

特にルイ・クープランの作品では、古い旋法の色彩が色濃く残っており、平均律では味わえない「特定の音程が持つ緊張感」を、拍子から解放された自由な空間で味わうことができます。


クラヴサンを実際に弾かれる際、この「拍子のない」楽譜を目の前にすると、どこで息を継ぎ、どこで音を溜めるかという、まさに**「楽器との対話」**が求められるかと思います。

17世紀フランスの鍵盤音楽 (Gemini)

フローベルガー、デュモン、シャンボニエール、ルイ・クープラン、ダングルベール
これらを時代の古い順に並べて。 
 
---------- Gemini

 ご提示いただいた5名の作曲家を、生年が早い順(時代の古い順)に並べると以下のようになります。

17世紀鍵盤音楽の作曲家(年代順)

  1. シャンボニエール (Jacques Champion de Chambonnières, c.1601/02–1672)

    • 「フランス・クラヴサン楽派の父」と称される人物です。

  2. デュモン (Henry Du Mont, 1610–1684)

    • リュリ以前のフランス王室礼拝堂で活躍し、宗教曲やクラヴサン曲を残しました。

  3. フローベルガー (Johann Jakob Froberger, 1616–1667)

    • ドイツ出身ですが、シャンボニエールらと交流し、組曲(アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグ)の形式を整えました。

  4. ルイ・クープラン (Louis Couperin, c.1626–1661)

    • シャンボニエールに見出された弟子であり、名門クープラン一族の先駆けです。

  5. ダングルベール (Jean-Henri d'Anglebert, 1629–1691)

    • シャンボニエールの後継者として、極めて緻密な装飾音の体系を確立しました。


この5名は17世紀のバロック音楽、特にクラヴサン(チェンバロ)の歴史において非常に密接な関係にあります。シャンボニエールがその礎を築き、ルイ・クープランやダングルベールが発展させ、ドイツのフローベルガーがそれらを吸収して国際的なスタイルへと昇華させていった、という流れで見ることができます。

 

この5人以外にこの時代に活躍したクラヴサンの作曲家は?
ボーアン写本やパヴィーユ写本に名前のある人とか。
 

---------- Gemini

ボーアン写本(Manuscrit Bauyn)やパヴィーユ写本(Manuscrit Parville)を挙げられるとは、17世紀フランス・クラヴサン楽派のかなり核心的な部分を探求されていますね。

これらの写本は、17世紀半ばから後半にかけてのフランスで、楽譜の出版がまだ一般的ではなかった時代の作品を現在に伝える「宝庫」です。先ほど挙げた5名以外で、これらの写本に名を連ねる重要な作曲家を紹介します。

1. ジャック・アルデル (Jacques Hardel, c.1643–1678)

シャンボニエールが「自分のスタイルを最も忠実に受け継いでいる」と高く評価した愛弟子です。生前には曲集が出版されませんでしたが、パヴィーユ写本ボーアン写本に彼の作品が収められていたおかげで、今日その名声が保たれています。特に彼の「ガヴォット」は当時非常に人気があり、多くの写本にバリエーションが見られます。

2. ニコラ・ルベーグ (Nicolas Lebègue, 1631–1702)

シャンボニエールやルイ・クープランに続く世代の重鎮です。1677年に出版された彼の曲集は、組曲の冒頭に「プレリュード・ノン・ムジュレ(拍子のない前奏曲)」を系統立てて配置した先駆的な例として知られています。パヴィーユ写本には、出版譜とは異なる初期稿や別バージョンが含まれており、当時の演奏習慣を知る上で貴重です。

3. ラ・バール家 (The La Barre Family)

ピエール・ド・ラ・バール(Pierre de La Barre)など、複数の音楽家を輩出した一族です。ボーアン写本には「La Barre」名義の作品が多く含まれており、初期フランス・バロック特有の、リュートの奏法に影響を受けた「スティル・ブリゼ(分散様式)」の典型を見ることができます。

4. シャルル・リシャール (Charles Richard, c.1620–1652)

シャンボニエールと同時代に活躍したオルガニストです。ボーアン写本には彼のアルマンドやサラバンドが収録されています。ルイ・クープラン以前の、より素朴で洗練されたフランス様式の萌芽を感じさせる作曲家です。

5. ミシェル・ド・ラ・ゲール (Michel de La Guerre, c.1605–1678)

フランスにおける最初期のオペラ試作者の一人としても知られますが、ボーアン写本にいくつかの鍵盤楽曲が残されています。


当時の写本の重要性

17世紀のフランスでは、楽譜の出版には王室の特権(プリヴィレッジ)が必要で非常に高価でした。そのため、プロの演奏家や愛好家たちは、気に入った曲を自分たちの手元で書き写してコレクションしていました。

  • ボーアン写本: ルイ・クープランの作品をほぼ網羅している唯一の史料であり、フローベルガーの作品がフランスでどのように受け入れられていたかを示す鏡のような存在です。

  • パヴィーユ写本: 1670年代のパリの流行を反映しており、ダングルベールが自身の出版譜(1689年)を出す前の、より自由な装飾様式を知る手がかりとなります。


プレリュード・ノン・ムジュレ (Gemini)

  「プレリュード・ノン・ムジュレ(拍子のない前奏曲)」は、17世紀フランスのクラヴサン音楽における最も独創的で、かつ謎めいた形式ですね。 楽譜から小節線が消え、全音符(白玉)だけで書かれたり、複雑な曲線で音のつながりが示されたりするその姿は、一見すると現代音楽の図形楽譜のようで...