教会旋法と調の関係がよくわからない。
第一旋法(ドリア旋法)は終始音がニ(D)だからニ調のはず。
それなのにト調の第一旋法もあるらしい。
---------- Gemini
教会旋法(チャーチ・モード)と近代の「調(キー)」を同じルールで捉えようとすると、どうしても混乱してしまいますよね。特にバロック音楽やルネサンス音楽を深く学ばれているあなたにとって、この「移調された旋法」の理解は非常に重要なステップです。
結論から言うと、教会旋法は「音の並び順(インターバル)」で決まるものであり、必ずしも特定の音(ニ音など)に固定されているわけではありません。
1. 「旋法」と「調」の決定的な違い
現代の「ニ短調(D minor)」などは、主音(D)を基準に「全・半・全・全・半・全・全」という構造を作ります。
一方、教会旋法における「第一旋法(ドリア)」の本質は、終止音(フィナリス)が D であること以上に、**「終止音から数えて 2 度と 3 度の間、および 6 度と 7 度の間が半音である」**という構造にあります。
第一旋法(ドリア)の基本形: D - E - F - G - A - B - C - D
(E-F と B-C が半音)
2. なぜ「ト調の第一旋法」が存在するのか
これは**「移調(Transposition)」**という考え方です。当時の合唱や合奏において、歌手の声域や楽器の音域に合わせて、旋法の構造を保ったまま全体のピッチを上下させることが頻繁に行われました。
第一旋法を G (ト音)から始めようとすると、ドリア旋法特有の「全・半・全・全・全・半・全」という間隔を維持するために、B に ♭(フラット)を付ける必要が出てきます。
G から始まる第一旋法: G - A - B♭ - C - D - E - F - G
(A-B♭ と E-F が半音となり、構造が維持される)
このように B♭ を一つ置いた状態で G で終わる曲は、当時の理論では「ト短調」ではなく**「G をフィナリスとする第一旋法」**と呼ばれます。
3. 「調」という概念との混同を解くヒント
あなたが「ニ調だよね?」と感じるのは、現代の音楽理論が「終止音 = 主音 = 調名」というルールで統一されているからです。しかし、教会旋法の時代には以下の 3 つを分けて考えていました。
| 要素 | 説明 |
| 終止音 (Finalis) | 曲が終わる音。中心となる音。 |
| 音域 (Ambitus) | その曲が使う音の範囲(正格か変格かを決める)。 |
| 音程構造 (Species) | 全音と半音がどこに来るか(どの旋法かを決める)。 |
つまり、「音程構造」さえ守っていれば、終止音が D であろうと G であろうと(あるいは C であろうと)、それは「第一旋法」として成立するのです。
バロック期のフルートやチェンバロの楽譜を見ていると、フラットが一つ少ない(例:ト短調なのに ♭ が一つしかない)楽譜に出会うことがありますが、それはまさにこの「移調されたドリア旋法」の名残であることが多いです。
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