教会旋法で書かれた曲は調号や終止音を見ても何の調なのか判断できない。
---------- Gemini
確かに、現代の長調(メジャー)・短調(マイナー)の感覚で楽譜を見ると、教会旋法はかなり手ごわいですよね。「調号がないからハ長調かな?」と思ったら最後にレ(D)で終わって「ドリアンだったのか!」となるような、ちょっとした「ひっかけ問題」に近い感覚かもしれません。
結論から言うと、「終止音」と「調号」だけでは不十分で、そこに「音域(アンビトゥス)」という要素を加えることで、ようやく正体が判明します。
教会旋法を判別するための3つのステップ
教会旋法を見分けるには、現代の調号のルールを一旦忘れて、以下の3つのポイントをセットで見る必要があります。
1. 終止音(Finalis)
曲の最後に着地する音です。これが旋法の「家」のような役割を果たします。
レ (D) で終わる:第1・2旋法(ドリア系)
ミ (E) で終わる:第3・4旋法(フリギア系)
ファ (F) で終わる:第5・6旋法(リディア系)
ソ (G) で終わる:第7・8旋法(ミクソリディア系)
2. 調号(Cantus durus / Cantus mollis)
教会旋法の楽譜(特にルネサンス期など)では、調号は「転調」のためではなく、**「シ(B)をフラットにするかどうか」**という選択肢として使われることが多いです。
調号なし(bなし): 正統な形。
bが1つある: 全体を完全4度上に移高した状態(あるいはトリトヌスを避けるための処置)と考えます。
3. 音域(Ambitus)と支配音(Tenor)
ここが一番のポイントです。**「同じ終止音でも、メロディがどこを動くか」**で種類が変わります。
正格旋法(Authentic): 終止音から上のオクターブで動く。
変格旋法(Plagal): 終止音の上下にまたがって動く(終止音より4度下まで行く)。
旋法判別早見表(基本の8つの場合)
| 旋法名 | 終止音 | 音域(目安) | 支配音(よく留まる音) |
| 第1:ドリア | D | D 〜 D | A |
| 第2:ヒポドリア | D | A 〜 A | F |
| 第3:フリギア | E | E 〜 E | C |
| 第4:ヒポフリギア | E | B 〜 B | A |
| 第5:リディア | F | F 〜 F | C |
| 第6:ヒポリディア | F | C 〜 C | A |
| 第7:ミクソリディア | G | G 〜 G | D |
| 第8:ヒポミクソリディア | G | D 〜 D | C |
なぜ「見た目」だけで判断できないのか?
それは、教会旋法が「和音」ではなく**「メロディの振る舞い(文法)」**だからです。
たとえるなら...
現代の音楽が「どのレール(調)の上を走るか」という決まりだとすれば、教会旋法は「どの駅(終止音)に向かって、どんな景色(音程関係)を眺めながら歩くか」というスタイルの違いです。
そのため、楽譜の冒頭にあるシャープやフラットの数(調号)を見ただけでは、その曲が「どの駅に向かっているのか」までは分からないようになっているのです。
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